「パクチーの有無について」「パクチーを分けていただきたい」
一時ほどではないにしても、ほぼ毎日上記のような質問を受けます。
コリアンダーことパクチー(香草)。

本来は世界的に存在していて東南アジアよりもむしろメキシコやパナマといった
中南米のほうがよく消費されています。
ところが、東南アジアの特集か何かで頻繁にその存在が知られてから、
「コエンドロ」という和名があるのにも拘らず、
なぜかタイ語の「パクチー」という言葉が独り歩きしてしまいました。
その結果ベトナムでもこの名前で、これだけを所望したいと言われてしまうため、
現地のベトナム人が戸惑うというある意味「異常事態」に
ちょっと距離感を感じています。

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タイ料理では絶対的な存在と思われている「コリアンダー」


たとえば、このパクチーは結構一般的なスーパーなどでも出回っているの
対して他のハーブはタイ食材店とか私たちなら農家直送で送ってもらう
必要があり、それだけ希少価値が高いわけです。
ところが、それらと一緒にメニューに出したとしても(それが本来の姿です)
パクチーだけ食べてほかのハーブ類を一切手をつけないという状態が
以前何度もありました。

まあ、金を出している客だから何をしても良いという理論はありますが、
あまりにも極端すぎるので、ちょっと悲しいものがあったのは事実です。

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(グリーンカレーの上にも乗せる「ホラパー」
しかし、いつもこのハーブが手もつけられずに残されて・・・・・。


この香草似とくには待っている人のことを「パクチニスト」というらしく
とにかく、「パクチー」を大量につけて食べるのが好きな人たち。
あたかも、なんでもマヨネーズをかける人(マヨラー)のようです。
南京虫とかカメムシの匂いに、当初抵抗がある人が、
あるときを境に異常にハマるこの香草。
これは、「納豆」とか「くさやの干物」あるいはベルギービールの
「グーズ・ランビック」と同じ原理が働いていることが容易にわかります。

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さて、前置きがいつも以上に長くなりましたが、ぜひそういう人に試して
いただきたい野が今回ご紹介する
「蓼(タデ)」東南アジアでは主にベトナム料理のハーブで
活躍する強力な香り味のする雑草です。

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蓼は、ナデシコ目タデ科イヌタデ属に属している「ヤナギタデ」の事を指します。
柳のような葉の形をしているからなのですが、別名「マダテ」「ホンダテ」とも
言われまさしく「タデ」の中心的な存在です。

ヤナギタデは、北海道から沖縄および台湾、中国、北半球の温帯から
熱帯にかけて広く分布する1年草です。
ベトナムでは「ラウラム(Rau răm)」と呼ばれています。


蓼は河川や湿地、水辺などに生えているのを見かけます。
ヤナギタデの茎は直立し、草丈は高さ40~80cm。
無毛で、よく分枝します。 葉の長さは、5~10cmで、葉柄は短いです。

花期は7~10月で、白く小さい花を、枝先にややまばらな状態で穂状につけます。
果実(堅果)は、レンズ形で、長さ3mmで3稜形になっています。

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刺身盛りなどに一緒に添えられているツマとして、紅蓼がよく登場します。
蓼の紅色の葉は料理を彩ることに加え、殺菌・抗菌作用としても効果を発揮。
昔、胃薬として用いられていたこともあり、生ものと大変相性が良いのです。


種子は生長した花被片に包まれているので水面に落ちてもしばらく浮かび
水面に散らばります。このような種子でも水中でさかんに発芽し、増水により
冠水した葉でも水中で光合成できます。
このような性質から、この植物は水条件が変化しやすい水辺、河原、休耕田などに
群生することが多い雑草です。

ですから、以前お付き合いのあった農家さんは、この「タデ」の
生命力の強さに頭を抱えていました。ほかの農作物を植えるところにまで
増殖するほど生命力が高いのです。



ところでこの「ヤナギタデ」はその全草を生薬「水蓼」(スイリョウ)と呼ばれ、
民間薬として用いられることがあります。
秋に全草を採取し、日干しにして薬用に使います。
ヤナギタデの効能には、血液凝固促進作用や、血圧降下作用を示すことが
報告されています。
これを消炎、解毒、利尿、下痢止め、解熱、虫さされ、食あたり、
暑気あたりなどに用いられます。
ハチや毒虫にさされたときには、ヤナギタデの生の葉をもんで塗布すると痛みや腫れがおさまるといわれていますし、
食あたりには、茎葉をすりつぶしたものに、おろしショウガを同量混ぜ合わせ、
小スプーン1杯を服用する。葉を水洗いして日陰で乾燥させたものを利尿や解熱に
用います。また濃く煎じて飲めば暑気あたりによいといわれています。
海外のネパールでは、魚毒として、葉を砕いて川に流し浮いてきた魚をとったり、
ヨーロッバでは葉から黄色の染料をとります。

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日本では、上記の説明したとおり、
刺身のつまやすり潰して酢に混ぜることで
アユ等の魚の塩焼きに使用する蓼酢に用いることがありますが、
東南アジアのベトナムでは、料理と一緒に食べるハーブのひとつとして
利用されています。
強い香りと辛味を持つハーブとして解毒作用があり、ベトナムでは体を熱くする
ハーブだといわれているため、妊娠中の女性は控えるそうです。

合う料理とされているものとしてサラダ類や、
ホビロン(孵化しかけのアヒルの卵をゆでたもの)、
貝料理、田ウナギ料理などといわれています。
 
ちなみに、ベトナムの人はこの蓼だけを食べるのではなく、
他の様々なハーブ類と一緒に食べます。
(例外的にホビロンと、貝類は蓼単独)
その中にはラウムイ(パクチー)とかラーウェー(ホラパー)
とかも含まれています
単体では強烈な味がしてもほかのハーブと一緒なら程よい
バランスがとれて違和感がなくなります。
ですから、魚や肉など素材の臭みを抑えたり、料理の味を引き締めたり、
風味を引き立ててくれるハーブとして必須な存在なわけです。


ところで日本では「蓼食う虫も好き好き」ということわざがあります。
これは人の好みはそれぞれで、ずいぶんと違いがあるということのたとえ
として用いるそうですが、裏を返せばそれだけ蓼と言うものは個性が強くて
普通は受け入れられないほど強力な香り・味を発するということに
なります。

ですが、パクチーことコリアンダーもそういう匂いで苦手だった人も
ハマってそれだけが欲しいとなるわけですから、
ぜひ今度はこのタデにも挑戦してほしいという気がします。
そうなると「パクチニスト」ではなく「タデ(ラウラム)ニスト」
になるのかもしれませんが。