東南アジアの食材シリーズ。今回はここ2・3年急激にこれの存在を
意識しているお客様が増えてきました。
東南アジアのハーブの「エース」とも言えるコリアンダーを取り上げます。

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コリアンダー(coriander、学名:Coriandrum sativum L.)
セリ科の一年草。パクチー、シャンツァイ (香菜)、中国パセリなど呼ばれます。
属名はラテン語。
日本名もあり、「コエンドロ」と呼ばれますが、現在ではほとんど使われず、
この記事を書いている人間も、今回初めて知った名前です。
これは鎖国前の時代にポルトガル語(coentro)から入った古い言葉です。
「コスイ」胡荽、「コニシ」という名前もあり、
これはコエンドロが用いられる以前の呼称です。
この香草は平安時代の延喜式、和名抄などでは、朝廷料理で生魚を食べる
際に必ず用いる薬味として記載がありました。

要するに、カメムシや南京虫のような匂いがするということで
日本料理の食材として使われることはなくなったものが
中国や東南アジア経由で入ってくる結果となったんですね。

本来は地中海東部原産で、各地で古くから食用とされてきました。
高さ25 cm程度。葉や茎に独特の芳香(カメムシ臭)があります。
また、熟した果実(種)にはレモンにも似た香りがあります。


コリアンダーとのかかわりの歴史は古く、プリニウスの博物誌には、
最も良い品質のコリアンダーはエジプト産という記述があります。

古代エジプトでは、調理や医療に用いられていた記録が残っています。
B.C.1552年のテーベの医薬書(Medical Papyrus of Thebes)に
その名が見られます。
B.C.1000年ごろからは、コリアンダーと
亡骸をいっしょに墓に葬る習慣もあったそうです。

その後、古代ギリシャや古代ローマでも、
最もよく用いられた薬草のひとつであり、
「医学の父」といわれたヒポクラテス(紀元前4~5世紀)も奨励しており、
胸焼け防止や催眠薬になると述べています。

また「千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)」では、
強壮作用があると考えられていたのか、媚薬として用いられています。

その後イギリスへはローマ人からもたらされ、アメリカへは
イギリスからの最初の移住者が伝えたとされ、こうして世界中に広まりました。
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(コリアンダーの花はこんなピンク色をしています)


そして、このコリアンダーは世界各地でさまざまな呼び名があります。


タイ
パクチー(タイ語: ผักชี)と呼ばれ、
トムヤムクンなどのスープやタイスキをはじめとした
さまざまな料理の薬味に用いられます。
※一般的に知られた名前です。当店のグリーンカレーペーストにも含まれています
 が、ほかにもいろんなものが含まれていますので、カメムシ臭はほぼ感知でき
 ないと思います。

ベトナム
ザウムイ(ベトナム語: rau mùi)と呼ばれ、
本場の生春巻きやフォーには欠かせない食材となっています。
(但しし、フォーや揚げ春巻きなどのベトナム料理の添え物には
これ以外の多くのハーブが含まれていまして当店もそれに準じています)
※ベトナム人の留学生が手伝いに来たときにこの名前を教えてもらいましたが
 しばし忘れてしまっていました。
 ちなみに当店の生春巻も事前に「不要」といわなければこちらを入れています。


中国
香菜(シアンツァイ、中国語: xiāngcài)と呼ばれ、スープ、
麺類、粥、鍋料理などの風味付けに利用される他、東北地方には
「老虎菜」(ラオフーツァイ)という
キュウリ、青唐辛子(レシピによってはピーマンで代用される)と
共にサラダの様に生食する郷土料理もあります。
北魏時代の斉民要術に密植による軟化栽培の方法が記されています。
※もともと、ここまでこのコリアンダーの認知度が高くないころから
 店で取り入れていました。当初は「シャンツァイ」という名前のほうが
 メジャーでした。

中南米
クラントロ(スペイン語: culantro)と呼ばれ、
スープやサルサなどに広く用いられます。メキシコからの移民が多い
アメリカ合衆国においても、英語のコリアンダーよりもスペイン語の
クラントロの方が一般的な呼称となっています。
※以前紹介したキーライム(マナオ)もそうなのですが、
 現在生のもので正規ルートで入っているものはメキシコ産です。
 パナマではこのクラントロが必須という情報もあり、意外な共通点を感じます。

ポルトガル
コエントロ(ポルトガル語: coentro)と呼ばれ、
魚介類と野菜を主な材料とする鍋料理です
カタプラーナなどの郷土料理によく用いられます。
ポルトガル料理の味を特徴づける重要な食材です。
※もともとの原産が地中海東部沿岸でかつて世界の家庭料理を
 弁当として提供していたことがありますからわかりますが
 このあたりの地域でも結構コリアンダーは必須アイテムです。

インド
ダニヤー(ヒンディー語: धनिया ; dhaniyā)と呼び、
カレーにもよく使われるスパイスのひとつです。
※インド系のカレーを作ったこともあるのでわかりますが
 コリアンダーの種(果実)はスパイスでは必須ですね。


ということで、タイをはじめとする東南アジアだけの食材とは
違うことがわかります。

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(コリアンダーの根(左)と種・果実(右)

ところで、このコリアンダーは葉だけでなく根や種(シードも使います)
種(コリアンダーシード)は、植物学上では果実ですが、
これを乾燥させたものをスパイスとしてすりつぶした粉末は柑橘類、
特にオレンジのような香りを漂わせカレーなどに用いられます。
※当店のグリーンカレーペーストにもクミンと一緒に砕いたものを
 使用しています。


また、根も使います。主にタイ料理ではよく使われ
グリーンカレーペーストだけでなく、鶏焼(ガイヤーン)用に漬け込むための
タレにもこのコリアンダーの根は使われますし、
ほかにもいろんなところで「陰」で活躍します。
※クロックというタイの臼(ウス)でにんにくと一緒に砕いて使うことが多いです。



中国医学では全草の乾燥品である「胡荽」の性質を
温、辛として生薬のひとつともしており、また、コリアンダーは「炎症を緩和する」、「気分を落ち着ける」、「体内の毒素を排泄する」等と言われています。

これについては科学的根拠ははっきりしていないそうですが、
それでも東南アジアに渡航する際に、腹を壊しにくいとか蚊に刺されにくい
という話もあり、確かに現地に渡航し始めたときには、よく蚊に刺されて
苦労した思い出があります。
しかし、何度か渡航を続けていると現地の衛生状態が年々向上している
というのもあるのかもしれませんが、ローカルなところに行こうとも
あまり蚊に刺されなくなったのは事実。
食べているとある程度体質が変わるのかもしれません。
(ただし、これは東南アジアのハーブ全体の話なので、必ずしもコリアンダー
 だけの話ではないです)


ということで、今回はコリアンダーを取り上げましたが、
日本ではなじみが薄いだけで実は東南アジア以外の地域でも
活躍していることがお分かりいただければと思います。